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- ほのぼの日和 |
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- 長かった折鞄も今回で最後になります!読んで下さりありがとうございました!ここでは、昭和3年に改造社から出版された現代日本文学全集 第18篇 徳田秋声集から「折鞄」に挑戦中です!ここでは左記の小説を現代語訳した上、下記の『』内に引用しております。徳田秋声の研究の一助になれば幸いです。 『家(うち)へ飛びこむと彼は部屋の隅にあった座布団のうえに、折鞄を投げ出して、そこに横たわっている妻を見た。妻は彼の裏の家(うち)にいるT-氏の夫人に介抱されて、静かに目をつぶって寝ていたが、眠ってはいなかった。掛かりつけの医者のGー氏と、Tー氏が融の机の傍に火鉢に当たっていた。 「今ね、電話でお帰りを止めようとしていたところです。」 そう言って皆が割合何でもなさそうな顔をしているので、融は出鼻を折られて、にわかに頭脳(あたま)が軽くなるのを感じたが、決して楽観はできないという気がした。 「そうですか。心配ないんですか。」 「大丈夫ですよ。静かにしておけば、落ち着きますよ。」Gー氏は事もなげに言うのであった。 融は何だか安心出来ないような気もして、そのまま火鉢の傍にすわって、ホテルの話しなどしているあいだも、時々Gー氏にきいた。 「誰か一人呼ぶ必要はないでしょうか。」 「いや、いつものあれですから、心配はないですよ。」Gー氏は言うのであった。 融は脳溢血の危険なこと恐ろしいことは、十二分に分かっていたけれど、診断がむずかしいものだとは思わなかった。で、今朝お雑煮をしまったあとで、何時(いつ)ものとおりに長火鉢にすわっていた彼女がふと嚔(くさめ)をしたところで、頭がぴりりと痛んだ。そして洟(はな)をかむと、痛みが一層強くなったと同時に、顔の色が変わって体が崩れそうになった。子供があわてて、背後(うしろ)へまわって介抱しようとした時には、彼女はもうぐったりとなっていた。 融は、ぼんの窪のところへ手をやったり、鼻と耳のあいだを痛がったりしている彼女の状態に不安を感じながら、割合医者に信頼していたところもあった。彼女は後脳(こうのう)のあたりに、ざくざく針が刺さっているような感じがしているらしかったので、どうやら脳溢血らしいいう気もしたが、それにしては口もきけるし、手も動くので、やっぱり医者を信じていいようにも思った ...
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